神戸近郊/芦屋 文豪・谷崎潤一郎にゆかりの場所


谷崎潤一郎は、 明治から昭和にかけて数々の作品を執筆した日本を代表する文豪です。ノーベル文学賞の候補にも挙がるほど、国内外でその作品の芸術性が高い評価を受けている作家としても有名ですが、3度の結婚や「細君譲渡事件」など、華やかな私生活でも注目を浴びました。


谷崎潤一郎は、東京生まれですが、世に知られている有名な作品を執筆した場所は、関東大震災の後、移り住んだ関西でした。特にお気に入りだったのは、大阪と神戸に挟まれた六甲山を背景とする阪神間。37歳から59歳まで阪神間を13ヶ所も転居を繰り返したそうです。


その一つが芦屋です。1934年から3年を過ごしたほか、『細雪』の舞台にもなりました。芦屋市は、その功績をたたえ、市内に谷崎潤一郎記念館を設立し、自筆原稿や書簡、愛用品などの資料を保存・公開しています。


こちらでは、芦屋で『細雪』と谷崎潤一郎のゆかりの場所を紹介しています。





芦屋で『細雪』と谷崎潤一郎のゆかりの場所を散策



芦屋は、谷崎潤一郎が1934年から3年を過ごしたほか、『細雪』の舞台にもなりました。『細雪』の幸子と夫貞之助の夫婦の住む芦屋の家は、阪急電車芦屋川駅近くです。



阪急芦屋川駅の北側を芦屋川に沿って山側に上っていくと、開森橋のすぐそばに谷崎潤一郎の文学碑があります。



大きな御影石に「細雪」と刻まれています。この文字は、「細雪」のモデルでもあり最愛の妻でもあった松子夫人の手によるものだそうです。






阪急芦屋川駅の北側の商店街の道が、『細雪』ででてくる水道路です。
『この三人の姉妹が、たまたま天気の好い日などに、土地の人が水道路と呼んでいる、阪急の線路に並行した山側の路を、余所行きの衣裳を着飾って連れ立って歩いて行く姿は…』。
ちなみにすいどうろではなく「すいどうみち」と呼ぶそうです。




この水道路に、『細雪』の櫛田医院のモデルとなった重信医院があります。なんと建物は戦前のまま現存しているそうで、趣のある素敵な建物ですね。なんの予備知識がなくても通りすがりに二度見してしまうほど印象的なたたずまいです。



芦屋駅から芦屋川沿いに南に下ると小説で登場する”業平橋”があります。芦屋川にはたくさん橋がありますが、業平橋交番の目の前にあるので、とてもわかりやすかったです。



『伊勢物語』の主人公ではないかとみられている歌人・在原業平は、いまの芦屋市に住んでいたといわれることが、業平橋の名前の由来となっているそうです。





業平橋は、平成30年度に、土木学会選奨土木遺産に認定されています。



業平橋から南東方面へ数分のところにある「富田砕花旧居」です。芦屋駅からは徒歩10分程度かと思います。谷崎潤一郎が、1934年に妻・松子と婚礼をあげた屋敷であり、小説『猫と庄造と二人のをんな』の舞台といわれています。富田砕花旧居・住所:兵庫県芦屋市宮川町4-12



谷崎潤一郎が去った後、この家には1939年に“兵庫県文化の父”といわれた詩人・富田砕花が暮らし、現在では遺品や原稿、書簡などが展示されています。



無料で入館できますが、入館日が水日のみなので、ご注意ください。






富田砕花旧居から、南へ下って20分足らず、閑静な住宅地にお屋敷にような建物が現れました。谷崎潤一郎記念館に到着です。



芦屋市は、その功績をたたえ、市内に谷崎潤一郎記念館を設立しました。自筆原稿や書簡、愛用品などの資料を保存・公開しています。また、期間限定の特別展なども開催されています。



記念館の入り口には、この重さ15トンもある巨石があります。



昭和13年、六甲の山津波が起こり、芦屋川をはじめ各河川が氾濫しました。『細雪』にも描かれている神戸一帯で起きた大水害です。その時旧谷崎邸宅(神戸市東灘区)に流れて来た巨大な岩石をそのまま庭石として置いていたそうですが、記念館設立の際に、旧邸の所有者のご好意により、記念館入口に移されたそうです。





文豪・谷崎潤一郎の『細雪』など 読後の感想を紹介


私が初めて手にした作品は『春琴抄』でした。谷崎作品には、少し常軌を逸しているともいえる女性愛を描いた作品がありますが、こちらもその代表格として挙げられる作品だと思います。当時学生だった私は、女性崇拝思考(嗜好と書くべき?)的なストーリーにばかり注目してしまっていたようです。


しかし、あれから少々年をとった今読み返してみると、全く印象が変わりました。作品を読んで、まず一番目に留まるのは、句読点がほとんどない流れるような美しい文体。その文体から、幻想的なおとぎの世界ような異次元空間が生み出されていました。他の人が同じ物語を描いても、決して同じような空間は生まれない、これを生み出せるのが、文豪・谷崎潤一郎の魅力なのでしょうか。ノーベル賞候補に7回も名前が上がったというのも納得です。


『春琴抄』と『細雪』とでははかなり違った印象を受けました。


谷崎潤一郎と言えば、執筆時期、扱う題材によって、文体・表現が変遷するのも大変有名で、いくつかの作品を読んだくらいでは、文豪の本質には近づけないのかもしれませんね。


『細雪』は、谷崎作品の代表的な作品の一つで、最も人気があるとも言われているそうです。大阪船場で旧家である蒔岡家に生まれた4人姉妹、鶴子・幸子・雪子・妙子の物語。4人姉妹で結婚適齢期の女性を含むとなれば、お話のメインにはやはり結婚が関わってきます。


当時の結婚観やお見合い事情、また、時代は変わっても変わることのない人間の本質などが、4人姉妹の日常を通して読者に伝わってきます。そういった部分はジェーン・オースティンの『自負と偏見』とも共通しているように思いますが、恋愛小説・ハッピーエンドという印象が強い『自負と偏見』に対して、『細雪』は、いたってシビア。日常的で現実的なストーリー展開だと感じます。


ただし、日常が描かれるといっても『細雪』は、上流社会。美貌の姉妹たちの日常生活が、季節折々の伝統行事や植物、食事の風景などと共に豪華絢爛に描かれていて、エンターテイメント性も大いにあります。そして、優雅だけれど親しみがこもった、時に遠慮がない関西弁など……とても生き生きとしていて楽しいです。こういった瑞々しい描写ができるのはやはり実在のモデルがいたからでしょうか。4人姉妹ののモデルは、3人目の妻・松子とその姉妹だったそうです。


上流社会の姉妹たちの結婚、恋愛の悲喜こもごものストーリーではありますが、私にとっては、ロマンチックというよりは、普段の親戚や友達付き合い、兄弟姉妹の関係などを自分に落としこんで読んでしまう要素が大きかったです。というのも、谷崎潤一郎の流れるように美しい文体が、視覚・聴覚、時には味覚など五感の全てを刺激するので、小説から溢れる臨場感がスゴイからだと思います。鋭い人物描写に、時には、生々しいな~とたじろいてしまうほどでした。


すぐそばで体温まで感じられるような登場人物たちに知らず知らずのうちに感情移入してしまうので、長編小説ですが、夢中になって一気に読めてしまいます。


そして、”現実的”の極めつけが、そんな終わり方するのかというラストです。物語の締めくくりがこうあるべきなどという決まりはない、現実とはこういうものだと目を覚まされるような終わり方です。


文字を連ねるだけで、視覚はもちろん聴覚などの五感に訴えてくるような、臨場感と世界観が見事です。あらすじを読んだり、人からストーリーの顛末を聞いただけでは決して味わえない、『細雪』の世界にご興味を持たれた方は、是非一度手に取って読んでみてくださいね。





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神戸水道 - Wikipedia
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